平成27年度事業報告 | |||||||||||
特定非営利活動法人 アジア高等教育支援機構 |
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I 活動成果 ラオスにおける大学や高等専門学校によるロボットコンテスト準備のための2回のワークショップに講師の派遣や部品の寄贈を行うと共に,日本大使館やと共にロボットコンテストの後援を行った.ロボットコンテストは年々技術が向上しており,それはロボット技術教育の向上につながると思われる.
なお2016年度のロボットコンテストは3月には行わず、11月にラオス国立大学の創立20周年記念行事があるので、その時期に記念行事の一環として実施されることになった. |
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II 事業報告 1.ロボットコンテストのためのワークショップの開催 日時:平成27年8月27日、28日 場所:ラオス国立大学工学部 参加校:7校 12チーム ラオス国立大学工部から6チーム(電子、IT、電気、機械、LAO-JAPAN、職業訓練学校教員養成センター) ルアンプラバン大学、パクセ大学、ラオス国立大学(ドンドック)、スズカカレッジ、ラオス(ビエンチャン)カレッジ、身体障害者職業訓練校 NPOからの参加者:小峰憲行 監事 NPOより寄付金: 59,184円 寄付品目:マイクロプロセッサ―および電子部品 2016年度ラオスロボット大会の内容: 二日目の午後、2016年度ラオスロボット大会の内容について検討した。 ・将来は自立サッカーロボ大会目指すが、現在では学生が製作するレベルで ・遠隔操作サッカーロボから新しいロボット競技に変更する(電子工学科教員) ・「考えるロボット」大会とする(小峰) ・文字書きロボット大会をしたいと学生から提案があった(学生) *結論として文字書きロボット大会の方向で準備することが決定した |
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![]() ワークショップの開会式でマイクロプロセッサ―および電子部品の贈呈 |
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2.研究指導 |
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(1) 森屋俶昌理事による研究指導活動 | |||||||||||
指導大学: ラオス国立大学工学部およびタイ・ KMITL情報工学部
日程: 6月23日 TG683便 羽田10:35発 バンコク15:05着 6月24日 朝10時にKMITL国際部長に面談。新しく就任した部長に国際交流 6月25日 KMITL工学部長コム先生と話し合い。 (1)KMITLの新しい研究課題:日本の支援で新しい鉄道計画が始まった。 (2)近い将来パイロットが不足することより、KMITLの中に新学部を作る (3)ピターク副学長の発案で設置された音響工学と芸術を含んだ新しく出来た (4)KMITLの発展に大きく寄与された、東海大学名誉教授寺本三雄先生の 6月26日 KMITLの卒業生で学位を取得して、3チャンネルの放送会社会で 6月27日 KMITLと共同研究を行ったナロン先生、ニッパ先生、ノッピン先生 6月28日 ラオスに移動。 大学院学生ブンタビ君から研究の進捗状況を聞く。午後、今後の研究 工学部長、カンプイ先生、電子工学科長プーミ先生とレストランで夕食 6月30日 電子工学科教員12名とラオス電力会社の発電所見学と懇親会に参加。 7月 1日 大学院学生ビラポン君から研究の進捗状況を聞く。 ラオスJICA事務所 午後4時訪問 牧本小枝、平藤常夫、大木扶由子諸氏とラオス国立大学、工学部の
QV445便 ビエンチャン18:40発でタイに 7月 2日 TG660便 バンコク13:00発、 羽田21:15着,日本に帰国。 ラオス国立大学における研究指導 ラオス国立大学工学部電子工学科に大学院修士課程が設置され2年目になった。今年9月に大学院生は修士論文を提出しなくてはならない。どの程度書き上がっているか不明。ラオスの学生は口が堅く重要な箇所は誰も答えてくれない。 最近小峰先生がラオスに行かれ、KMITLの先生も出席し修士論文の審査が行われたようだ。論文の合否に関する最終判断はラオス側が行う事になっている。
今回の指導は論文提出前の最終段階での対応。しかし6月に行う予定の、国際シンボジュームが中止になり、学生の態度にやる気が薄れていることが濃厚に感じられた。考えられることは、大学の研究環境から十分な内容の論文作成は出来ない。学生は大学側が安易な論文でも認める雰囲気を察知し、無理してまで完成させる事をやめたと考える。何とも残念な大学院教育の一歩だと思う。 3年前、KMITLのタウイン先生が学長になったとき、ラオス国立大学の大学院開設を強く要望した。ラオス側だけの予算と周囲からの協力だけでは開設にはならなかった。10年以上前からJICAに支援をお願いしたが、大学院までは出来ないと言われた。残る道はラオスだけの力で開設することだ。若い先生はJICAの支援で外国に行き学位を取得し大学に戻ってきた。修士課程の指導は行えるメンパーが集まって来た。この時期に大学院を開設しないとラオスには研究機関が出来なくなる。将来、後進国のままでいなくてはならない。情報化の進む時代に周囲の国により遅れた知識は、国の発展を阻害されてしまう。電子工学科のラオスにおける存在はきわめて重要である。だが、独力だけでは一歩が踏み出せない。考えられる案として(支援をしてもらえる)、タウイン先生がパトムワン(Pathuwan Institute of Technology)工科大学の学長時代にお願いをした。 この工科大学は規模が小さく、研究もあまり行われていない大学ではあったが、タウイル先生はラオス国立大学との交流をかなり以前より行っていた。大学院の支援の可能性は理解していただいていた。1年後彼がKMITLに学長で戻った時点では、大学院の支援が決まっていた。 ラオスに修士課程が開始される話を聞いた時、私は夢が実現したことに驚いた。 同時に実験機材がないラオスで、現地の測定データを使い論文を学生に書いて貰うことを、カンプイ先生に申し出た。4人の大学院生を受け渡された。
大学院生4人に最初会った時は、話をよく聞き熱心さを感じた。大学を卒業し実社会で働き学問の重要性を再確認した者と思った。電子部品や中古の測定器を買い集め40kg程度の品物を2回目の研究指導時に運んだ。自動計測は10年前に行ったとき、ラオスでは測定環境が悪くデータを取ることが出来なかった。そのため手動でデータ取得が行える測定器に変えた。記録計用紙と記録計用ペンは特別注文で発注しラオスに持って行った。ほぼ測定器の準備も出来、測定環境を良くしたいと、ドンキョウ先生にお願いしたら無視され悲哀を感じた。4回目の研究指導では学生が、仕事で忙しい事を理由に研究室に出てこない人もいた。5回目には修士論文の一部を見せてもらった。しかし周囲にいる大学院生が論文の準備が出来ていないためか、進んで論文の仕上げに邁進する事はないようだ。 大学院生の研究指導での反省点 ラオス国立大学の卒業生の学力に疑問を感じた。特に通信工学全般の知識が低いのではないか。満足な教科書や参考書がない中での勉強は、授業中の講義の内容を理解するのみになる。先生も参考資料を十分に持っていないので、広い内容など教えられない。勉学の予習と復習が行える状態に持って行かなくてはならい。タイ語の教科書を持たす事が必要と思われる。基礎的な学習は必ず理解させることが、学生には必要だ。 測定器の扱いは誰でも出来るようにさせたい。家庭にもパソコンや家電製品がある時代だから、日常生活で機器に関心を持ってもらいたい。測定器に触ることを望まない学生は、装置が壊れたら修理がラオスで不可能であることからの不安によると考えられる。記録データは1年間で満足に収集した時間は、極小時間(約3ヶ月分)のみであった。次年度は自動計測にしないとデータが集まらない。 ラオスの学生は余りにもプライドが高い。自分は選ばれた高学歴の人であると思い込んでいる人が多い。無理もない事実であるが、研究指導上大きな障害である。日本の工業高校と同レベルに等しい。まずは大学の学力向上をはからなくてはならない。 電子工学科の大学院の現状
ラオスで高等教育を受けた人は極めてプライドが高い。他人の意見を聞いてくれない。また、工業化がほとんど進んでいないので、概して機械や電気に興味が少ない。自国による教育の歴史は浅く、やっと政府支援による大学教育が始まった状態である。高等教育は外国からの支援による留学が戦後行われた。現在帰国した留学生が国の中心で活躍している。このような教育基盤にあるラオスで、大学院教育の中心になる修士論文の指導は、ラオス側では行われていない。諸外国に行き学位を取得し帰国したラオス国立大学の先生は、国全体で見れば特権階級の人である。しかし、ラオスに戻ると誰一人として研究は行っていない。研究が行える環境がないことと、国民性が災いして困難な研究などしなくても、生活が十分なりたつ国である。他国の大学と共同研究をする熱意も見られない。タイのモンクット王工科大学の先生が大学院の集中講義に大勢参加し、頻繁にラオスに来ている。ラオスの先生も学生を連れてタイに行っている。しかし研究に関しては何らの結び付きは生まれてこない。必要性を感じていない為だと思う。
私はラオス国立大学と関係を持ち、約20年近くになった。ラオスにおいて測定を行い、ラオスに役に立つ研究論文を大学の先生に書いてもらった。まとまった成果は国際シンボジュームで発表してもらった。カンプイ先生、ポンパサー先生には何回か発表してもらった。このレベルまでには研究が行われていた。修士課程の学生に公の場で研究成果を発表した人のみに学位を出す計画が、いとも簡単に撤廃されて審査なしの状態で学位を出すようになってしまった。一度緩めた手綱を元に戻すことは不可能に近いと思われる。どのような経過で無審査になったかわからない。タウイン先生が学長の時、KMITLと同等な審査をするために、修士課程の学生に学会レベルの外部発表を義務にしたが、新しいKMITLの学長になったら日本の専門学校以下のレベルの大学院教育になってしまった。 今後における提案 1996年にラオスに国立大学が設置されまもなく20年になる。電子工学科はJICAの支援(ラオス国立大学工学部支援に係る第三国専門家派遣、1999年)もあり、工学部の中では大きな発展をした。またJICAの(アセアン高等教育ネットワーク強化)支援でラオスの電子工学科の選ばれた学生は、KMITLに留学し学士の学位を取得した。継続してKMITLの修士課程の学生に選ばれ修士の学位を取得した者もいる。日本の大学の修士課程に選ばれた学生もいた。後に博士課程に進み学位を取得する者も出てきた。 JICAの継続的な支援により電子工学分野での人材がラオスに出てきた。これからラオス人による高等教育が進むかに見えたが、停滞してしまい後ずさりを始めた。この時期に再度のJICA支援による立て直し以外に方法が見当たらない。後ずさりを止めるために、ワークショップ、セミナー、国際シンボジュームなどを行い、教員と学生の意識改革と継続したラオスの発展を支援したい。
過去にラオス国立大学が中心となり行われた対外会合として手元に残っている資料から発展段階がわかる。 (i) "Seminal on Antenna and Electromagnetic Wave
Propagation" (ii) ”Workshop on Applied
Computer" (iii) ”Joint International Conference on Technology" (4) ”Joint International Conference
on Information and Communication Tech- nology" (5) ”Joint International Conference
on Information and Communication Tech- nology" 2014年以降大学院生の研究論文発表の場として、ラオス、タイで毎年国際シンボジュームが開催されることになった。しかしラオス側の都合により延期が行われ今年9月23日から25日に変更された。論文締め切り日の近くになり再度延期になった。今後いつ開催されるか不明である。 KMITLにおける最近の研究方向 ラオス国立大学の研究指導はKMITLの先生方の支援があって成し遂げられる。その為に、協力してもらえる先生方との交流が必要になる。まずKMITLの工学部長との意見交換が必要になる。 今回、学部長は日本が支援する鉄道新線に関した研究項目でKMITLが関与出来る物には積極的に応募したいと語っていた。ラオスの先生で共同研究を希望する先生がいたならば、KMITLにお願いしたい。音響工学に近い研究を希望するラオスの先生にはピターク副学部長にお願いしたい。 KMITLでの研究指導 情報工学部のオララープ先生が衛星信号に見られるシンチレーション現象の研究を行っている。十分な測定器もない中で、熱心に論文を発表している。オララープ先生は明年定年退職になるので、1名在学している大学院学生を卒業させたいので、支援を強く望んでいる。残された期間内に修士論文を提出させなくてはならない。そのため手元にある測定器をKMITLに移動して、短期間になるがデーターを取得しなくてはならない。早い機会にKMITLに行き、短期間内に論文が発表出来るように支援したい。 タイにおける高等教育の新しい取り組み プラユット首相は7月研究開発投資額をGDP比0.45%から1%に高めると発表した。狙いは産業の高度化を図ることである。また、タイ石油公社は5月ラヨーン県に約50億バーツの予算で,理系の高校と大学院大学を設立させる。国と民間の力で、将来国を発展させる下準備を始めた。自力で研究、教育にタイでは動きがあるが、ラオスでは専門学校の増加までである。 (2)有賀正理事による研究指導 平成28年3月7日~3月16日ラオス国立大学とタイのモンクット王工科大学ラカバン校を訪問し材料科学及び接合科学分野の研究指導を行った。ラオス大学では、JICAの東南アジアに展開するSEED Netプログラムで以前私の指導で学位を取得した学生が教員として大学に戻り研究と教育を行っており、教育の現場で必要な実験材料を日本から持参して実験の手助けとした。又研究についても学位取得の研究課題を継続したいとの希望があり、ラオスという特異な研究環境で可能な研究の進め方など話し合いを行った。今後も継続して出来れば年に数回は大学を訪問し、実験材料の供給、研究遂行のためのアドバイスを続けて行きたいと考えている。キンモンクット工科大学では研究分野が同じ研究者がおり、研究遂行にあたって、必要なアドバイスを行った。又大学院学生で日本で研究し学位を取得したい学生に対して大学の紹介や必要な助言を行った。 (3)飯島敏雄理事による研究指導 平成27年6月22日~7月3日および平成28年3月7日~17日ラオス国立大学(NUOL)とタイのモンクット王ラカバン(KMITL)を訪問し、マイクロバブルに関する研究指導を行った。マイクロバブルは最近注目されている研究テーマで、基礎的な研究から、工学のみならず農業、漁業、医学まで応用範囲が広く、両大学では農作物の促成栽培に対する応用研究を行うことになった。マイクロバブルに関する応用研究は安価に実験装置ができることが特徴で、研究費の少ないラオスやタイの大学には向いている。第1回目の訪問時はマイクロバブルの基礎について講義し、第2回目の時はから農作物の促成栽培に対する応用研究のための実験装置作成について議論し、次回の訪問時までに実験装置図と一部部品作りを行うことになった。NUOLのカウンターパートは機械工学科のSengratry助教授で、KMITLではPanmanas助教授で、二人とも研究熱心で今後の研究の進展を期待している。 |
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![]() Sengratry助教授にマイクロバブルについて解説 |
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3. 海外での論文発表のための渡航費の支援 ラオス大学工学部電子工学科のSomsanouk講師が日本の富山市で開催された第34回シミュレーションに関する国際会議(JSST2015)で論文を発表するための渡航費支援を行った。以下に同講師の国際会議参加のレポートと論文を示す。 |
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